|  | 正樹:  塗装の仕事を始めて三年目になるんですけど、色についてもっと知りたくなりました 
 川口:  それは、良い事ですね、塗装の仕事をしていても塗料の知識や調色、塗装技術は身に付く
                        んですけど、色彩の知識となると二の次になっている場合が多いですね。
 
 正樹:  自分は、色のセンスも無いし・・・・・・・
 
 川口:  いきなり自信の無い発言ですね
 正樹君がデザイナーやアーティストを目指すならセンスは最重要かも知れませんが塗料や
 塗装などを通じて色にかかわるのなら心配はご無用・・・・・
 センスが全てではないですよ、
 
 正樹:  安心しました
 
 川口:  但しセンスは大事です、これからは良いものを見て日々センスを磨いてください
 
 正樹:   はい、よろしくお願いします
 
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      | 1、初めに 
 塗料と塗装の目的
 | 川口: 早速だけど、塗装の目的って何でしたっけ ? 
 正樹: 錆や汚れから護る、 それから、美しくする
 
 川口: よく出来ました、でも他にもあるんですよ
 例えば、交通標識や、道路に引かれている白や黄色のセンターラインなどは、「護る、美しく
 する」 には当てはまらないですよね。
 
 正樹: はい、毎日見てるのに、いわれてみれば確かに、今まで深く考えた事がありませんでした
 
 川口: それで良いんです。標識などは深く考えずに瞬時に見分けられなければならないものです
 から
 
 正樹: なるほど・・・・
 
 川口: それでは、塗装の目的についてまとめてみましょう
 
 まとめ
 1、
      保護→ 物体を錆や腐食汚れ傷などから護る
 例:橋梁を錆から護る  コンクリートの中性化防止  木材の腐食防止
 プラスティックレンズのハードコート
 
 2、
      美化→ 色彩を用いて彩る
 例:楽しさや、安らぎを演出
       素材の持つ質感を強調する(木材塗装)
 
 3、
      指示→ 色彩を用いて判別性や視認性を高める サイン的役割
 例:交通標識、トラフィックペイント、スイッチ類
 
 4、
      その他  抗菌性の付与 等、表面に機能性を与える
 
 次回は、色の力についてです
 
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      | 2、色の力 | 川口: 今回は色の力について考えてみましょう。目を開ければ様々な色が飛び込んできます。 でも色が持つ役割や力について改めて考えることは少ないと思います。しかし衣食住、
 全てにおいて色を使っているのは、色の力を利用してるといえるのではないでしょうか。
 ところで正樹君、色の役割や力って何でしょうか?
 
 正樹: うーん、物を美しく彩ることですか?
 
 川口: はい、正解です。
 でも美しいだけではだめな場合もあるんです。
      例えば室内は、美しいだ けではなく利用する
 人にとって快適でなければなりません。 特に不特定多数の人が使うパブリックスペースでは
 快適性は非常に重要です。また建築物の外壁も町並みの一部を構成する重要な要素です
 から不快感を与えるような施色は避けなければなりません。
 
 正樹: 確かにそうですね、外壁の色は見本帳をお客様に見せて好きな色を選んで戴いていました
 が町並みのことも考えてアドバイスする必要があるんですね。
 
 川口: そのとおりです、色には美観性と快適性を左右する力があるのですから、これらの力を十分
 理解して色を選定することが重要です。
 
 正樹: 色を決めるのって、好き嫌いだけではないのですね。
 
 川口: はい、公共性が高まるにつれて様々な要因を加味して、慎重に色彩を選択する必要が出て
 きます。
 でも遊びやレジャーに着ていく服装などは自由に好きな色で楽しんじゃいましょう。
 正樹君、他に思いつきませんか?
 
 正樹: 信号機などは色を変えて見やすくしているのも色の力だと思います
 
 川口: そうですねこれも正解です。
 もし信号が白黒だったり、文字による表示だったら瞬時に正確な判断はできにくくなって
 しまうでしょう。また、生鮮食品の鮮度なども色によって判断していることが多いですよね
 この様に、色には判別をしやすくする力を持っています。
 
  (図1−1 マウスポインターを写真の上にもってきて下さい)
 
 正樹: 例えば、書類を整理するときにジャンル別にファイルの色を、変えておけ
 ば探しやすくなるのも色の判別性を利用してるってことなのですね。
 
 
 川口: ではもう一つ、色には感情効果というのがあります。 人は色を見たとき心を揺さぶられます。
 色は人の心に直接働きかける力があります。夕焼けを見て感傷的になったり、青空を見て
 爽快な気持ちになったりすることはよく
      あることと思います。
 また、赤は暖かく、青は冷たく感じますね、この様な感情効果を利用して商品の色を決めるのは
 商品自体に色の力を付与することなのです。つまり言葉によらず、色によって人の心をコントロー
 ル出来ると言ってもいいかもしれません。
 
 正樹: 色の力って思っていたより凄いんですね。
 
 川口: そうですよ、言葉によらない分、知らず知らずにあなたの感情もコントロールされてるかも知れま
 せんよ!
 
 それでは代表的な色の力を三つ覚えてくださいね
 まとめ
 1、美観性、快適性
 
 2、判別性
 
 3、感情効果
 
 次回は、色の三属性とマンセルシステムについてお話します
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      | 色の三属性と マンセルシステム
 | 川口:正樹君は、色の三属性について知っていますか? 
 正樹:三属性って何ですか?
 
 川口:あれれ? それは困りましたね。三属性は、色について学ぶ上では非常に大事な基本事項ですか
 ら十分に理解しておく必要があります。それでは、「色相」「明度」「彩度」などという言葉は聞いたこ
 とがありますか?
 
 正樹:はいそれなら知っています。
 
 川口:色の三属性とは、色が持つ三つの特徴「色相」「明度」「彩度」に注目して色を分類したり表すのに
 用いられます。その代表的なものがマンセルシステムです。
 属性についてもう少し分かりやすく説明します。
 タレントの和田アキ子さんを人の特徴である「性別」「身長」「体重」という三つの属性で表してみると
 性別⇒女性  身長⇒高い  体重⇒やや痩せ型 このように表すことで和田さんの身体的な様子
 をある程度伝え表すことが出来ますよね。色についても考え方は同じです。
 それでは色の三属性について詳しくお話しましょう・
 「色相」とは 赤、黄、緑、青、紫、のように色味の事を言います。
 「明度」とは明るさの違いで最も明るい色は白、暗い色は黒となり、明るい色は明度が高い、暗い
 色は明度が低いといいます。
 「彩度」とは色の鮮やかさを表し、鮮やかな色を彩度が高い、濁った色を彩度が低いといいます。
 例えば、ひまわりの花びらを三属性で表現すると「明るく鮮やかな黄色」となります。しかし、言葉だ
 けではあまり細かく表すことは出来ません。そこで記号と数字を用いて表す方法がマンセルシステ
 ムです
 
 正樹:マンセル記号は、塗装の色指定などの時に良く見るので知っています。5YR7/5とかってやつで
 すよね。でも内容はあまり知らないので、詳しく知りたかったんです。
 
 川口:それでは右下の「色相環」と呼ばれる色の環を見てください。
  図2−1 マンセル記号は、三属性を「色相」「明度」「彩度」
 の順に表記し5YRが色相、7が明度、5が彩度
 を表します。
 「色相」は、基本5色相と、その間の中間5色相
 の計10色相で構成され数字とアルファベットで
 表します
 基本5色相⇒R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)
 中間5色相⇒YR(黄赤)、GY(黄緑)、BG(青緑)
 PB(青紫)、RP(赤紫)
 さらに細かく表示するために、1つの色相につい
 て1〜10までの数値を添えて表し、それぞれの
 色相の中心の位置を5とします。
 例えば赤の場合2.5Rは5Rより紫味がかった
 色に、7.5Rは黄味がかった色ということになり
 ます。
 「明度」は、最も暗い理想的な黒を0、最も明る
 い理想的な白を10としてその間を0〜10の数
 字で表します。
 「彩度」は、色の鮮やかさを表す尺度で、無彩色
 の彩度を0として数字で表し鮮やかな色ほど数値
 は大きくなります。                      図2−2 明度
 
  色によって彩度に恵ま れた色もあればそうで
 もない色もあります。
 例えば塗料の顔料で                    低い←明度→高い
 言えば赤系は14位
 までありますが緑では                    図2−3  彩度
 
  10程度です。今後化学 技術の発達によりさらに
 彩度の高い顔料の出現
 も考えられます。                       高い←彩度→低い
 それと、もう1つ赤や青な
 ど色味のある色を有彩色、
 白や黒、灰色などの色味のない色を無彩色といい、これらの色は色相、彩度が無いので明度だけ
 でN−5とかN−7.5のように表します。
 
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